AI エージェントのためのタスク管理をつくった

シリーズ・第 1 回 — 「AI エージェントのためのタスク管理をつくる」。Amenbo という小さなアプリを、どう考えて、どう組み立てたか。今回はその出発点、「なぜつくったのか」から始めます。

Amenbohttps://amenbo.work/)という、AI エージェントのためのタスク管理アプリをリリースしました。

普通のタスク管理アプリと違うのは、主に使うのが AI エージェントで、人間はその次だというところです。第 1 回は、機能の紹介の前に、そもそもなぜこういうものをつくったのかを書きます。

使い込むほど、文脈が壊れていく

AI エージェントで開発をしていると、規模が大きくなるほど、長く続くほど、同じところでつまずきます。文脈が膨らみ、どう対処しても行き詰まる。

大きな作業・長い作業で文脈が膨らみ、どう対処しても行き詰まる図。そのまま続ければパンクして性能が崩れ、セッションを切れば共有をやり直す毎回コストがかかり、複数エージェントに分ければ情報の処理でタスクがぶつかる。
大きな作業ほど、文脈の扱いが手詰まりになる

対処に困るだけではありません。作業そのものの土台も崩れていきます。

プロバイダー側も、内部に人間の知らないメモを残す機能で補おうとしていますが、それはそれで別の問題を抱えています。

文脈に追いつくコストを抑える

この手詰まりに効くのが、今回つくった Amenbo です。AI エージェントのために、人間との議論で

を記録します。肝は、そこを探し直さずに追える構造にしたところにあります。決定・タスク・依存は、ばらばらのメモではなく、つながったグラフになっています。

決定とタスクが依存・前提のエッジでつながったグラフ。いま見ているタスクから、前提の決定と、依存して止まっている相手へ数本のエッジをたどるだけで文脈が揃い、つながっていない残りのレコードは開かない。
いま見ているタスクから、前提の決定と、依存で止まっている相手へ。数本のエッジをたどれば文脈が揃い、ストアの残り(灰色)は開かない

「この作業は何を前提に、何が決まって、いま何で止まっているのか」——それを、履歴を総ざらいせずに、このつながりから引けます。

どれくらい違うのか、同じ問いを Amenbo あり/なしの2条件でエージェントに解かせ、手数と読み込んだ量を実際に計ってみました。

同じ問いに答えるまでの探索の手数(ツール呼び出し回数)の実測比較。Amenbo なしは中央値で約19回、Amenbo ありは約9回とおよそ半分。読み込んだ情報量も1.4〜1.9倍少ない。どちらの条件も最終的に正解には到達しており、差は到達コスト。
同じ答えに、Amenbo は約半分の手数でたどり着く(実測・中央値)

劇的な差ではありません。どちらでも、最後は正しい答えにたどり着きます。違うのは、そこまでにかかる手間と、読む量です。今回試したのは、履歴もコミットもよく整った、Amenbo なしでも追いやすい部類のコードでした。それでも、探索は約 2 倍。整理が甘いコードなら、差はもっと開くはずです。

Amenbo がとくに効くのは、この2つです。

ただ、Amenbo が助けてくれるのは「どのレコードを、どういう関係で読むか」まで。そのレコードを読む手間そのものは、これまでどおり残ります。

検証の方法と、生の数字(クリックで開く)

検証パターン(同一モデル claude-sonnet-5 のヘッドレス実行・各 n=4・中央値で比較)

  • 自分の開発バックログにある実タスク由来の2つの問いを使用(テーマ:配布方式/DB 接続層の方針)。
  • 問いは Amenbo を匂わせない中立文で、両条件とも同一:(1) 何に決まったか、(2) なぜ/何を変え・撤去したか、(3) いまどこまで進んでいるか。
  • 条件A(なし)Read / Grep / Glob / git のみ。amenbo は遮断し、ソースと git 履歴だけで解く。
  • 条件B(あり):上に amenbo CLI を追加。実ストアのクローンを読ませ(本番は無傷)、使い方の学習コストは除外(定常状態)。
  • モデル・プロンプトは両条件で同一。エラー・1ターン退化・サブエージェント委任の run は集計から除外。外部メモリ注入や文脈の持ち越しも遮断。
  • 採取:ツール呼び出し回数/読み込んだバイト数/ターン数/コスト。

テーマ1:配布方式(中央値 [最小–最大])

指標なし (A)あり (B)倍率
ツール呼び出し18.0 [14–23]8.5 [8–14]×2.1
読み込み量 (KB)41.429.1×1.4
ターン数19.09.5×2.0
コスト (USD)0.400.31×1.3

テーマ2:DB 接続層(中央値 [最小–最大])

指標なし (A)あり (B)倍率
ツール呼び出し19.5 [19–33]10.5 [8–12]×1.9
読み込み量 (KB)29.916.2×1.9
ターン数20.511.5×1.8
コスト (USD)0.500.29×1.7

手数のばらつきも違う:あり (B) は 8–14 に収束、なし (A) は 14–33 と広い。当てを外すと総当たりが際限なく膨らむ、ということ。両条件とも最終的な答えは正しかった。

責任を負うのは人間

では、これをどこで動かすか。ここでもう一つ、動かしがたい力学が効いてきます。AI は責任を取れない、ということです。

どれだけ AI エージェントを使っても、その成果物の責任は人間が負います。仕事の上では、人間の名前で出すしかありません。

だから AI エージェントは、手元の閉じた環境で動いたほうがいい場面が出てきます。実際、私自身のタスク管理は Asana などを使って、私の責任のもとで関係者とやりとりしています。ここに AI が入ってくると、困る。

だから、分ける

答えは、棲み分けでした。

人間が責任を持ってやりとりする本物のタスク管理は、そのまま人間の側に置く。文脈のためにつくった Amenbo は、AI 専用のローカルの閉じた環境に置く。こうすれば、ちょうどいい棲み分けが成り立ちます。

人間が責任を持つ領域(関係者との調整・提出物・Jira などのタスク管理)と、AI が閉じた環境で動く領域(決定とタスクの記録=Amenbo・複数の AI エージェント)を、棲み分けとして分ける図。
人間の責任下のタスク管理と、AI のためのタスク管理を分ける

これが Amenbo です。人間のタスク管理と競合しない、AI エージェントのためのタスク管理

チーム向けの仕組みとは、競合しない

世の中には、チームで AI を活用するための仕組みもたくさんあります。Amenbo は、それらと競合しません。向き合っている課題が、そもそも違うからです。

チームで AI を使う仕組みと Amenbo は解く問題が違うことを示す図。左はチームで協働し成果を共有・連携する仕組み(情報を中央に集める)、右は個人の AI が文脈と意思決定を保つ Amenbo(手元のローカルに閉じる)。両者は競合しない。
チームの協働・共有を解く仕組みと、個人の AI の文脈を保つ Amenbo。競合ではなく、別の問題

次回

第 2 回:Amenbo の全体像 です。GUI ⇄ Tauri ⇄ Core ⇄ CLI のレイヤー構成と、データがどこに置かれるか、決定とタスクをどうグラフとして持つかを、図でまとめています。個別の技術に入る前に、まず全体を見渡してください。

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